退職を切り出す前にやっておくべき5つの準備。「明日言おう」の前に
「もう限界、明日辞表を出そう」
そう決意した夜に、この記事を読んでいる方もいるかもしれません。お気持ちはよくわかります。ただ、感情の高ぶりに任せて翌朝退職を切り出すと、結果的に自分が不利になることが多いのも事実です。
退職は、人生の節目の一つ。だからこそ、切り出す前の「3〜7日の準備期間」が、その後の生活の質を大きく左右します。この記事では、退職を伝える前にやっておくべき5つの準備を、優先順位の高い順に整理しました。
1. 有給休暇の残日数を確認する
最初にやることは、有給休暇の残日数の確認です。
なぜ最優先かというと、有給は労働者の権利として法律で守られているものだからです。退職時に「忙しいから消化させない」と言われることはあっても、法的にはあなたに消化する権利があります。
確認方法
- 給与明細の「有給残日数」欄を見る
- 社内の勤怠管理システムで確認する
- 人事や総務に直接問い合わせる(退職を匂わせる前に)
消化のタイミング戦略
退職日を決めるとき、有給日数を逆算しておきましょう。例えば残り20日あるなら、最終出社日から20営業日後を退職日に設定することで、すべて消化できます。
「退職と同時に有給を消化させて」と切り出すと拒否されやすいので、退職届に最終出社日と退職日を分けて記載するのがスマートです。退職届の書き方は別記事で扱いますが、ここで覚えておいてほしいのは「有給を最大限活用する想定で退職日を決める」ことです。
2. 就業規則を読み返す
次にやるべきは、就業規則の確認です。入社時に渡されて以来、開いたことがない方も多いのではないでしょうか。
退職に関連する条項として、最低限以下の3つはチェックしてください。
チェックすべき3項目
①退職の予告期間
「退職の◯ヶ月前までに申し出ること」と書かれているのが一般的です。1ヶ月前、2ヶ月前など、会社によって異なります。
ただし重要なのは、民法上は2週間前の申し出で退職が成立すること(民法627条)。就業規則と民法が矛盾した場合、民法が優先されます。とはいえ、円満退職を目指すなら就業規則に従うのが現実的です。
②退職金の有無と支給条件
退職金制度がある会社の場合、「勤続◯年以上」「自己都合か会社都合か」などで支給額が変わります。あと半年で勤続条件を満たすなら、退職タイミングを少し調整するだけで数十万円違うこともあります。
③競業避止義務
特に専門職や営業職の方は注意。退職後一定期間、同業他社への転職を制限される条項があれば、転職先選びに影響します。
就業規則は、人事に「コピーをください」と頼むか、社内イントラで閲覧できることが多いです。退職を匂わせずに確認しておくことが大切です。
3. 金銭面の備えを試算する
これが意外と見落とされがちですが、最も現実的な準備です。
必要な貯金額の目安
転職先が決まらないまま退職する場合、生活費の6ヶ月分を貯金として確保するのが目安です。家賃・食費・光熱費・通信費・保険料などを合計して、6倍してみてください。
例:月の生活費20万円の方なら、最低120万円。
「すぐ次の仕事が見つかるはず」と思っても、転職活動が長引くケースは珍しくありません。特に40代以降、専門職、ハイクラス層は、満足のいく転職先が決まるまで3〜6ヶ月かかることが普通です。
失業手当の概算
会社都合・自己都合で給付内容が大きく変わります。
- 自己都合退職:給付開始まで7日間の待機期間 + 2〜3ヶ月の給付制限あり。給付期間は最低90日
- 会社都合退職:給付開始まで7日間の待機期間のみ。給付期間は最低90日〜最長330日
ハラスメントや極端な労働環境が原因の退職は、「自己都合」でも「特定理由離職者」として会社都合と同等の扱いになる場合があります。ハローワークで相談する価値があります。
失業手当の詳しい計算方法は別記事で扱う予定ですが、目安として「退職前6ヶ月の給与の50〜80%」が日額として支給されます。
4. 次の選択肢を考えておく
退職した後、自分はどう生きるのか。これを切り出す前に仮でいいので決めておくと、退職交渉でブレません。
選択肢のパターン
①即転職する
すでに次の会社が決まっている、または転職エージェント経由で進めている状態。最もリスクが低いパターンです。
②休養期間を取ってから転職
心身が疲弊している場合、1〜3ヶ月の休養を挟むのは合理的な選択。失業手当を活用すれば経済的にも支えになります。
③フリーランス・独立
スキルがあれば現実的。ただし、最初の半年は収入が不安定になることを覚悟しておく必要があります。
④学び直し・資格取得
専門教育訓練給付金、教育訓練支援給付金など、国の支援制度を活用する選択肢。
どれを選ぶかで「退職日」「貯金額」「失業手当の手続き」がすべて変わります。
並行で進めたいこと
退職を切り出す前に、転職エージェントへの登録だけでも済ませておくのがおすすめです。登録は無料で、面談を通じて自分の市場価値を客観的に知れます。「思ったより評価が高い」「希望年収は現実的」といった事実がわかれば、退職交渉も自信を持って進められます。
5. 退職を伝える順序を決めておく
最後は、退職を伝える順序と方法です。
基本のフロー
- 直属の上司にアポを取る(「お話したいことがあります」と切り出す)
- 退職の意思を口頭で伝える(理由は簡潔に。詳細を語る必要なし)
- 退職届を書面で提出(口頭だけだと「聞いてない」と言われるリスクあり)
- 引き継ぎ計画を作成
- 同僚への報告は、会社の指示に従う
よくある失敗パターン
- 同僚に先に話してしまう → 噂で上司の耳に入り、関係が悪化
- メールやチャットで伝える → 失礼と取られ、円満退職が崩れる
- 退職理由を詳しく説明しすぎる → 反論や引き止めの材料を与えてしまう
退職理由は、聞かれたら「一身上の都合」「家庭の事情」「キャリアプランの変更」などのシンプルな表現で十分です。会社への不満を本音で語る必要はありません。
引き止められたときの対応
「給料を上げる」「部署を異動させる」と引き止められても、よほどの好条件でない限り、撤回しないのが原則です。なぜなら、引き止め交渉に応じた人は「次は辞めない人」と社内で認識され、その後の昇進・昇給で不利になることが多いからです。
退職代行という選択肢について
最後に、自分で退職を切り出すのが心理的に難しい方への補足です。
近年、退職代行サービスが普及しています。「上司の顔を見るのも辛い」「引き止めが怖い」「パワハラがある」といった状況では、有効な選択肢の一つです。
費用は2万〜5万円程度。即日退職にも対応してくれるサービスが多く、本人が会社と一度も連絡を取らずに退職を完了できます。
ただし、退職金や有給消化など、複雑な交渉が必要な場合は弁護士運営の退職代行を選ぶことをおすすめします。一般の民間サービスは「交渉」ができないため、会社側が拒否した場合に対応できないケースがあります。
まとめ
退職を切り出す前にやっておくべき5つの準備をご紹介しました。
- 有給休暇の残日数を確認する
- 就業規則を読み返す
- 金銭面の備えを試算する
- 次の選択肢を考えておく
- 退職を伝える順序を決めておく
「明日辞表を出そう」と思った夜は、まず深呼吸して、この5つを3〜7日かけて整えてみてください。冷静に準備した退職は、その後の人生を大きく変える土台になります。
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